2008年全日本鍼灸学会発表

上腕二頭筋のDOMSに対するBANSHIN刺激の鎮痛効果

*1明治国際医療大学伝統鍼灸学教室

*2明治国際医療大学柔道整復学教室

篠原昭二* 1、角谷和幸* 2、齋藤宗則* 1、渡邊勝之* 1

水沼国男* 1、和辻直* 1、関真亮* 1、小田原良誠* 2

【はじめに】昨年の本学会において、丈番鍼(はんしん:焼き鍼)に変わる治療器具として、
1秒以内に直径3ミリ程度の尖端子の温度が65℃になる装置、BANSHINを開発したことを
報告した。そこで今回、実験的に経筋病モデルとして、上腕二頭筋の遅発性筋痛を作成し、
BANSHINの鎮痛効果について検討したので報告する。
【方法】対象は、文書にてインフォームドコンセントの得られた健常成人男子18名であり、
MYOLET-RZ450 (川崎重工業株式会社)を用い、非利き手側を対象に肘関節屈曲最大筋力
(Nm) を測定し、その値の80、70、60%の負荷で肘関節屈筋群の遠心性運動負荷を3セ
ット(1セット: 10回、角速度: 30deg/sec、インターバル: 60秒)行わせ遅発性筋痛を
作成した。運動負荷24時間後に、無作為割付にて無刺激コントロール群、魚際への皮内鍼
刺鍼群(鍼群)、魚際へのBANSHIN刺激した群(BANSHIN群)の3群において、刺激前
後の鎮痛効果をVASを用いて検討した。なお皮内鍼刺激は、最圧痛点に対して中枢に向か
って皮内鍼を約0.5ミリ無痛で刺入して絆創膏を貼付した。BANSHIN刺激は、最圧痛点に
対して刺激部位が重複しないようにわずかに位置をずらして3回刺激した。
【結果および考察】運動負荷24時間後に上腕二頭筋部の遅発性筋痛が生じているのを確認
した上で、魚際穴付近に出現する最圧痛点に対して刺激をした結果、皮内鍼をした群では
p =O. 0686であり鎮痛傾向を示し、BANSHIN刺激をした群では、無刺激コントロール群に
比してp=O. 0147と有意な鎮痛効果が観察された。皮膚にわずかに0.5ミリ程度刺入する
という皮内鍼刺激と皮膚面上に1秒以内に約65℃の熱痛刺激を与えても、皮内鍼刺激より
も有効な鎮痛効果が得られたことは、非常に興味深いことである。BANSHINは丈番鍼に替わ
る刺激装置として開発したものであるが、疼痛局所への刺激をしなくても、十分な鎮痛効
果が得られことが明らかとなった。
【結語】「BANSHIN」は、古代の丈番鍼に替わる治療補助器として開発されたものであるが、
皮内鍼刺激と同様な鎮痛効果を期待しうる可能性がある。
(研究協力: (株)チュウオー今里秀俊、多原駿、池田隆)